大阪の映像制作・制作技術会社 (株)写楽の社長 木内の気ままなブログです。                    (文章や写真を引用される場合はご連絡ください)
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ワイヤレスマイクの比較(UWP-V1)
最近、技術ネタを書いていなかったので、今日は音声機材(ワイヤレスマイク)のネタです。

ソニーの低価格ワイヤレスUWP-V1(送受セットで約5万円)と、WRTシリーズのワイヤレスマイクの音質比較をしてみました。

比較したのはSONY UWP-V1
20100209-UWP
(C)SONY



20100209-WRT
TX SONY WRT-822
RX SONY WRR-861 です。
(ブツ撮りついでに撮ってみた写真w 色温度の高い外光が表示部に反射しててNGですね…)

さて、画質や音質の評価は人によって様々ですので、今回は「音声伝送路」としての電気的な比較をしてみることにしました。

測定には、パソコン用のオーディオインターフェース(以下、Audio I/F)の性能を測定する、Right Mark Audio Analyze(以下、RMAA)というソフトを使います。
20100209-RMAA00

このソフトは、Audio I/Fのアナログ出力からテスト信号を出力して、そのテスト信号をAudio I/Fのアナログ入力から再び録音する事によって、Audio I/Fの性能をテストをするというものです。
(フリー版ではASIOに対応していないので、シェア版を購入しています)

本来はAudio I/Fのテストをするソフトですが、今回はワイヤレスマイクの送・受信機をつないでテストをしてしまおうという寸法。

今回のテストでは、Audio I/FにMOTUの828mk3
20100209-828

ワイヤレス送信機への入力レベル調整用としてWendt(ウエンツ)のNGS-X3(ポータブルミキサー)を使いました。
20100209-NGS
写真中央の3chミキサーです。(撮影現場で撮った写真から)

20100209-RMAA01
テスト信号はAudio I/Fとミキサー通過でも音質が変化しますので、それぞれの単独での数値もテストする事にします。

さて、それではテストしてみましょう。

20100209-RMAA02
正確な測定のため、テスト信号のレベルを調整します…。

…と、困ったのは、ワイヤレス送信機への入力レベル。
送信機~(電波)~受信機出力→Audio I/Fで、ワイヤレス送信機の入力レベルをサイン波で設定すると、断続的な音声信号が入力されるテスト中に受信機の音声出力が厳密には安定せず測定NG…。
入力する信号を他の測定器を使って送信機の規定入力レベルに合わせてみても、受信機出力が変動?して測定NG…。
どちらの送信機でも似たような状況でしたが、WRTの方が変動幅が大きい感じ…。うむむ。

ワイヤレスの送信機って、勝手にAGCのような挙動をするんですね…。
送信機に最大周波数偏移を制限するIDC(リミッター)が付いてるんでしょうか?

現場でワイヤレスマイクを付ける人の声量によって送信機のATT(入力レベルの減衰量)を設定する時に、受信機側で音質を確認しながら設定を詰めていっても「有線みたいにしっくり来ないなあ」と感じていたのはこのせいかも。
20100209-att

試しに、明らかに過大なレベルで送信機に突っ込んでみても、有線と比較してほとんど歪まず「これって一体…」ってありません? 
TXのピークLEDも多少点灯しても良いのか、(A/Dのように)全く点灯しないように調整したほうが良いのか分かりにくいです。(規格としてS/Nがそんなに良くないですから)ギリギリまで突っ込みたいのに天井が分かりにくいのは不便ですね。あんまり小さくてもボソボソですし…。

※コンパンダ方式…
電波帯域の狭いワイヤレスマイクの音質改善に用いられている方式。送信機側で音量の大小の幅を圧縮し、受信機側で伸長する事によって、音声回線の見かけ上のダイナミックレンジを拡大しています。国内のほとんどのA、B帯などのアナログワイヤレスマイクで使用されていて、メーカーによってコンパンダの方式が異なるため、異なるメーカー間の送・受信機では基本的に互換性がありません。コンパンダの特性の関係で完全に元通りにはならないため、音質は微妙に変化してしまいます。海外製品ではコンパンダやEQ処理をDSPで行っているアナログワイヤレスの送・受信機もあります。


というわけで、仕様や受信機出力のレベルを何度も確認しつつ、なんとかRMAAの許容範囲に収まるように送信機への入力レベルとAudio I/FのHAゲインを調整して測定しました。

よって、今回のテスト結果は、送信機への入力レベルや受信機出力レベルがUWPとWRTとで完全に同一ではないので、項目によって「機器が出せる最高の結果じゃないかも」、「実使用ではこんなに安定しないかも」、「厳密な比較とは言えないかも…(泣)」という条件付きの参考値としてご覧下さい。

※併記しているMOTU 828mk3とNGS-X3の単独での結果も、今回の測定のために調整した状態のものなので、それぞれのベストな値ではありません。


電池は新品。送信機は共に法定最大の10mW。送・受信機は10mほどの距離に置き、RFレベルが安定した状態で測定しました。

このテスト、MOTU 828mk3から出したテスト信号を、NGS-X3(ミキサー)でマイクレベルに落としてワイヤレス送信機に入力、ワイヤレス受信機の出力(マイクレベル)をMOTU 828 mk3のHAで増幅して測定しています。

したがってワイヤレスの測定値は原理的にNGS-X3単独での測定値より全項目において劣るはずですが、面白い事に、逆転している部分がありました。
これは、コンパンダによって無音時の暗騒音が圧縮されたりして、受信機側で元通りに戻っていないという事ですね。帯域によっては受信機側でのカットオフもありそうです。


コンパンダは動作原理が似ているDOLBY NRやdbx NRと同様に、多少ですが音質に影響が出ます。ワイヤレスが「声がバサバサする」とか、「有線のようにリニアリティが良くない」と言われる原因でもあります。
(国内では数社のワイヤレスで実際にdbx NRが使用されています)

他社のワイヤレスでは、一般的に放送用から一般設備用(C帯を除く)の全てのワイヤレスで同じ方式のコンパンダーが使用されていますが、ソニーの場合、WRTシリーズとUWPシリーズでコンパンダが違っています。

今回の比較は、発売からすでに約20年経過しているものの放送用としても現行のWRTシリーズと、発売から5年程度と新しいもののかなり低価格なUWPシリーズのコンパンダの違いを比較してみようと思ったのがきっかけでした。


測定結果のPDFはこちら

20100209-RMAA04


このRMAAですが、機会を見つけて他の機材の測定にも使ってみようと思います。Audio I/Fとデジタルでつなげば、デジタルミキサーやレコーダーのD/A、A/Dの性能も見られますし、ASIOドライバが使えるZOOMのR16なども面白そうですね。暇があれば…。
20100209-RMAA03



さて、話は戻りますが、UWP-V1では、旧機種のUWP-C1と比べ本体が小型・堅牢になったほか、付属のピンマイクも新しいものになっています。
20100209-77
(左:UWP-V1付属マイク、右:ECM-77)

写真にはありませんが、旧機種のUWP-C1ではECM-44のような大きなピンマイクで、音質も良くはありませんでした。
しかし、UWP-V1に付属されているピンマイクは、放送でもよく使われているECM-77を目標にして開発されたそうで、以前より小型化されて音質もだいぶ向上しています。

ただ、当然価格も違いますし、音質はECM-77には及びません。

そのため、うちの会社ではUWPでもWRTと同じECM-77を使っています。

20100209-77BMP

このECM-77は端子を自分で付け替えたわけではなく、海外でECM-77BMPとしてUWPシリーズの発売前からWRT-824用などとして販売されているものです。
ECM-77BMPはマルチリンガルの説明書付きで、当初は日本でも販売される予定だった事が伺えますが、数年前にソニーさんに聞いた話では、国内市場で販売する予定は無いとのことでした。

※UWPシリーズのミニ端子はT:HOT,R:COLD,S:GNDになっているため、家電店で流通しているステレオミニプラグのマイク(T:L+,R:R+,S:GND)は使用できません。端子を変えても給電回路が違うのでプラグインパワーは不可でしょう。

20100209-UWP_TX
UWPの送信機はおなじみWRT-850のケースに入れています(笑)

ちょうどUWP-V1を購入した時に対応していただいた○ystem5のN島さんが大学の後輩で、UWP-V1の送信機がWRT-850のケースにピッタリ入る事を教えてもらいました。(はじめは気が付きませんでしたが、送付状の名前を見てびっくり!!)販売店に現場出身のエンジニアがいるのは心強いですね。


現状、UWP-V1は小型カメラ専用として使っているため、到達距離や安定性などをWRTと比較した事は無いんですが、機会を見つけてテストしてみたいと思います。

ちなみに、WRT-850(SONY)とWX-TB840(RAMSA)をアシスタントさんに両方付けてもらい、歩いて遠ざかって行ってもらったテスト(WRR-860とWX-RJ800で受信、ともに1/2λの標準ホイップアンテナ)では、ダイバーシティの切り替わりの状況や使用可能な距離はほとんど同じような感じでした。

しかし、アクティブアンテナを外付けして延長する設備などでは、アンテナ側で低い周波数に変換して伝送する方式のほうが良い場合もあるかもしれません。また、他社ではブースター内蔵のアンテナもよく使いますし、どうなんでしょうね。
個人的に複数メーカーのラック型受信機を同時に使った事はあまりないのですが、機会があれば比べてみたいですね。



今回はワイヤレスマイクの比較のネタでしたが、個人的にはワイヤレスは極力避ける派です。とは言っても使う機会は多いわけですが、現場での私は虎視眈々と「有線にしようよ」と言い出すタイミングを探しています(笑)。

ロケの際、リクエストが無くてもほぼワイヤレスは用意していきますが、着座で動かない場合など、有線マイクが使える場面では音質面と安定性重視で可能な限り有線を使いたいですね。
(うちの会社では瞬時に切り替えできるようにWRTとECM-77BC、DC-78をセットにしています)

ENGロケ専門の音声さんの中には、どんな場合でも無条件にワイヤレスを使おうとする方がいらっしゃいますが、現状のワイヤレスは(デジタルを除き)どんな機種でも有線マイクの音質には及びません。これは最終納品が何であれ、明瞭度やMAでの調整可能範囲にも関係してきます。

アナログベーカムの時代はリニアトラックのS/Nが60dB程度でしたから、ロケでは現場の音声さんがある程度割り切った音質で録るのが当たり前でしたが、現在は全てがデジタル化されて音声にも質が求められる時代ですから、場面に応じて対応する必要があると思います。


おまけ。

国内ではB帯(800MHz帯)のデジタルワイヤレスが(やっと法制化されて)製品として出てきたところですが、海外の一部では、2.4GHz帯を使用する比較的低価格なデジタルワイヤレスが使われ始めています。

国内の大型イベントや番組などでは、イベント会場内や近隣施設との運用調整で、使用可能本数が限界に達している例が散見されますが、海外の2.4GHz帯のデジタルワイヤレスでは、オペラのテレビ生放送で60波同時使用の例があるそうです。
20100209-sabine
(C)SABINE

近い将来、日本国内でも現在とは違う手軽なデジタルワイヤレスが使えるようになるかもしれません。
60波使えたら、48人とかのグループでも全員に本物のマイクが持たせられますね(笑)。

それと、某海外メーカーが、2.4GHzでデジタルステレオ伝送ができる送受セット(マイク接続可)を国内向けに販売しているようですが、どなたかテストされた方いらっしゃいません?
あれって、ちゃんと技適取ってるのかな……


もひとつおまけ。

うちの奥さん用のBluetooth受信機+ヘッドホン(HFI-15G)
家事をしながら音楽を聞いてます。
20100209-BT
規格では10mとありますが、20mくらいまで安定受信できています。

デジタル圧縮はかかるものの赤外線方式のコードレスヘッドホンより安定受信できるので、収録現場で制作さんの音声モニター用として用意したら喜ばれそう。
アナログ入力のA2DP送信機も市販されていますから、検討の価値ありですね。


制作技術(映像制作・音響制作)
株式会社 写楽
www.sha-raku.co.jp
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2016/12/12(月) 14:21:51 | | # [ 編集 ]
大変興味深く読ませて頂きました。良い記事に感謝です。
2011/08/18(木) 06:31:01 | URL | Konak #- [ 編集 ]
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