大阪の映像制作・制作技術会社 (株)写楽の社長 木内の気ままなブログです。                    (文章や写真を引用される場合はご連絡ください)
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マルチバンドコンプ
今日はマルチバンドコンプの話です。

前職時代、私がorban OPTIMODの設定にハマっていた(笑)のは過去の記事で書いたことがあったんですが、今日はそれに少し近い話題です。

orban OPTIMOD 8500FM
私がいた局にあったのはこれより古い下位機種でしたけど。
20091119-1
(C)orban.com

※orban OPTIMOD…
放送局用最終音声(マルチバンド)リミッター。国内のテレビ・ラジオ放送局では8割程度に普及していると言われ、法定で定められた変調度を逸脱しないように制御する役割のほか、放送音量の適正化や音質の色づけに使われています。一部ではテレビの伝送回線(裏送り)用に使用しているところもあります。
設定によって音質が大きく変わるため、FMラジオ放送では音質面でのステーションキャラクターを決める大きな要素になっています。


なんで私が設定にハマっていたのかですが、ご多聞にもれず、どこの国でも地方でも、民放FM放送というと音圧競争で必要以上に大きく聞こえる音(パンパンに圧縮されて詰まった音)が良いとされる傾向があります。そんな状況に個人的には一石投じたいと思っていたんです(笑)。
(私は番組でかける音楽のジャンルによって時々設定を変えていました。当時、他局では例がないと思います。笑)

放送、特にFMラジオ放送では、他局より音楽に迫力を出したいとか、スタジオトークの部分を聞こえやすくするという目的で、各局さんとも常に音量が大きくなる設定が多くなっています。ロケで地方に行った時など、まれにびっくりするような極端な音になっている放送局さんも…。
(これはDOLBY NR-Cのテープをデコード無しで再生してんのか?とか、ステレオエンハンスしすぎで逆相の音像になってる…というような…)

その他、音声多重化したときの設備をまだ使っているなどで、某地方局では日ごとに設備が切り替わると、これで問題にならないの?…というようなひどい音になっていたり…(ry。
まあ、大都市でもピークリミットが甘くてアナログ地上波のステレオ受信がよくはずれるテレビ局も…(ry )


この、放送時の自動音量調整ですが、小さい音量で聞いている時は視聴者が音量調節をしなくても音楽もトークも平均的に聞こえるので便利な面も多いのですが、音楽ではROCKやPOPSでも曲の静かな部分、クラシックでは全般的に必要以上に音が大きくなったりして良くない事が多いほか、ある程度の音量で聞いていると常にやかましくて疲れてしまいます。

一般の方でも、自分が持っているCDとFM放送では同じ音源でもずいぶん音質が違うなあと感じたことがある方がいらっしゃると思います。(公共放送さんのFMを除く)

多少の平滑化とエンハンス程度であれば聞きやすくするための措置としては良いのですが、一般的に設定値は固定なので、常にベストとは限りません。アーティストさんによってはFM放送で音質が変わることをとても嫌っていらっしゃる方もいます。

音楽をミックス(MTR音源をトラックダウン)する際、たいていのエンジニアは曲によってマイクごとやグループ、全体のコンプ・リミッターの設定を変えますが、放送では常に同じ設定で持ち上げてから叩いてしまうので、全ての音源に対して常に理想的な音にはできないんです。

とは言っても放送局に納品される番組やCMはMA済みでも音量はバラバラ。生放送でもミキサーさんによってずいぶん違いがあるので、マスター(主調)での自動音量調整とリミッティングは欠かせません。

最終リミッターでどうせ叩かれるだろうと思って過度なピークを放置していたり全体的に大きすぎると、番組に限らず登録時に必要以上に全て下げられたりしますから良くありません。返品されなかったと安心してはダメで、むしろよく返品する放送局のほうが良心的なんです。(>MAエンジニアのみなさん)
それと、やかましいCMは視聴者の印象が悪いという事を認識しないといけません(>制作さん、代理店さん、スポンサーさん)

「音なんてなんとなく聞こえてりゃいいんだよ」という方針でない限り、リミッティングの設定はどこの局さんも悩むところだと思います。また、自動調整の幅が小さくなった地デジ放送が「聞き取りにくい」といわれるのはまた逆の問題でもあり根が深いですね。
地デジの音量に関しては局間でも色々違いがあるので、アナログテレビ放送のカラー化の際に放送局間で調整を行なったように、地デジの音量に関しても何らかの協議が必要でしょう。
(放置しておくと、受像機側での不完全な自動調整が普及しちゃいますよ!)


というわけで、OPTIMODで実験…。したいところですが、2バンドの最低機種でも80万円ほど。一般的に民放局で使われている機種だとウン百万円ですので、現用で使っていても検証機を用意するのは無理(涙)。 現職時代、私は深夜の試験放送で色々テストさせてもらいましたが、いつでも誰でも簡単に実験はできません。


そこで、何か似たようなVSTプラグインでもないかなあと探していた時に見つけたのがこちら、
単体ソフトの「MultiMAX」(Vector シェアレジで\2,200)です。
20091119-2
(2005年に購入。現行はVer.3.24です)(wavファイル読込み・出力に対応。オンエアモードでは音声入力への生の処理にも対応)

OPTIMODとは設定項目が異なりますが (一般的なVSTプラグインなどのマルチバンドコンプとも違います)、帯域ごと、設定によって音がどう変化するか試してみると面白いですよ。

このソフトの開発者さんは、オーディオメーカーで家庭用コンポの開発を担当していた時、FMラジオ放送に似たエフェクトを作ったそうで、その時の経験などを生かしてこのソフトを開発されたとの事です。


プリセットがいくつか入っていて、FMラジオ放送でよくあるようなパンチの効いた(苦笑)エンハンスとリミッティングが試せるほか
20091119-3


自分で作った設定を3つまでメモリーする事もできます。
20091119-4
(この設定は私が車で音楽を聴く時用の設定です。ちょっとハイ上がりですが、前段のAGC幅が広くてリリースも遅めなのでアタックも潰れすぎず良いですよ~)

音楽のジャンルや曲調、入力レベルによっても最適な設定は変わるので、破綻のない無難な設定を作るのはOPTIMODと同様に簡単ではないのですが、設定内容を理解すれば自然な音量アップも容易です。設定次第では楽曲のマスタリングにも向くと思います。
エフェクター(!?)として設定しても数百万円のOPTIMODにひけをとりません。

古いCDやインディーズCDでは音量やミックスバランスがあまり良いとは言えないものもありますが、MultiMaxを通すと好みの音質で聴きやすいオムニバスアルバムが作れちゃいます。EQとして使っている部分も大きいですね。

当初は車で聴くためのMD作りなんかで使っていたんですが、設定次第ではお仕事でも使えます。

MAの際にはBGMの聴感の統一やナレーション(レベル)のケバ取り、ステムミックスの平滑化などに使うと便利です。BGMのステムミックスへの軽いエンハンス(Lowの音量感UPなど)に使うのも便利です。(ただしパラメーターは手動設定必須で、それぞれ別々にファイル処理)

必ず使うかと言われるとそうでもなく、MAをこのソフトで仕上げているわけでもないんですが、一般的なダイナミクスプラグインとは一味違う効果が得られるのでお気に入りです。
個人的には(サイレント認識やアイドル、バンドごとのリリースタイムなど最新のOPTIMODのような)もっと細かい設定ができたり、NUENDO4で使用できるVSTプラグイン化して5.1chにも対応(chごとパラメーター自由で、リンクもパラメーターごとに指定可能なマニアックな仕様に)してほしいなぁ…と思っています。
Sys○em6000を「あぁ、なんちゃって5.1化がついてるシ○ート向けの?」と一蹴してしまえるくらいに…(笑)。


話は戻りますが、放送番組の納品の場合でも、必ずしも放送局側のリミッターを通さずそのまま電波に乗せてもばっちりな音にしておくまでの必要はありませんが、全国には様々な設定のリミッターが存在していますから、納品レベルが悪いと放送波に乗った時にひどい音になる可能性はあります。
そうならないためにも、納品時にしっかりしておくのは大事ですね。

また、一部のCS局などでは、マスターに放送用の音声リミッターが無く!、納品素材がそのまんまストレートにOAされてしまう局もありますから、そういった場合は納品時にテレビ視聴に適したダイナミクスにしておかないと話にならない場合もあります。
(以前、番組納品する際、そのチャネルでは聞こえにくい番組や音が大きすぎる生放送やCMが混在していたため局側に問い合わせて判明。 バンク登録時の調整はせず常にNAB規準通りで、不良素材に関してはアナログVU計でピークの過度な張り付きのみチェックして返品していたとの事。う~ん。)

まあ、納品前にOA予定のCSチャネルを自分で視聴契約して他番組まで確認する私もやりすぎですけどね…。


その他、VPや市販用のDVDソフト、Web配信ではダイナミクス処理を伴う音声のレベル管理はもっと大事です。そのまんま視聴されるわけですからね。
各分野での運用上の適正レベルに関しては、安易に表にしてしまうと色々問題あるので…、直接お話しましょう。

しかし、他社さんの事情はよく分かりませんが、NAB規準のままで市販DVDを作ったり、単に音量を上げてしょっちゅうクリップしていたり、お手軽リミッターでペッタンコに潰れた音を良しとしているような映像制作会社さんは少なくないようです。
ちょっと信じられませんけど…。ノーマライズしただけとか、無頓着なところは多いようですね。


話はちょっと逸れますが、一般の方が映像制作会社を選択される際など、音に対する配慮と言う点でも比べてみると良いかも知れません。

なかなか発注してみないと分かりにくい部分ですが、映像制作における音声の品質は、映像も含めエンジニアの技術水準や姿勢が如実に現れる部分だと思いますから、一つの指標として見て良いと思います。
ダイナミクスの処理は、ミキサーの実力も見えてくる部分ですね。

ハイビジョン映像には質の高い音声が必須です。
うちの会社は音も良いですよ~っと (笑)



それからついでにレベルメーターですが、デジタルミックスやデジタル納品がほとんどになった現在、VU計は実際のところあまり役にはたたなくなっています。実際、プロでも詳しくない人のほうがVU計をむやみに神聖化している気が…。

収録やOA用ミックス、MAでは、最終的なピークが気になるものですが、ピーク監視・レベル監視には主にヨーロッパで使用されているこちらのピークメーターが便利です。(国内では一般的ではありませんが、個人的におすすめです)

ヨーロッパの放送局ではこのメーターがよく使われているそうです。
20091119-5
(C)BBC 英TSL社製。日本ではmtc扱い。

しかし、(たぶん)高そうだし、持ち歩きも不便そう…。

ということで、私のおすすめはフリーソフトのこちら。
20091119-6
(C)www.darkwood.demon.co.uk

国内では馴染みのないメーターですが、このPPMについてはこちらをどうぞ。(wiki英語版)

「EBU規準」とガッカリすることなかれ、このフリーソフトではリファレンスレベルが変えられるのでNAB、DVD、Webなどのミックスの際にも自分の基準に合わせて使えます。(規準レベルはご自分で設定してください)
反応も早いし見やすくて便利です。フリーのVSTプラグインのVUメーターの類よりも実用的だと思います。
このPPMは3年ほど前から使っていますが、ノートでも動作するので持ち出しでも便利です。デジタルI/Fでつなげれば設定も楽。「4」が0VU。一目盛りが4dBです。
ピークをどこまで許容するかは自己責任でお願いします(笑)。


また、一般用途に適するレベルメーターではありませんが、英BBCの研究所が開発した時間平均のレベルを表示できるメーターソフトが配布されています。
20091119-7
(C)BBC R&D  「baptools」

サンプル長の異なる時間平均で表示され、音声レベルの平均を視覚的に確認できます。名称はラウドネスメーターですが、ITU-R BS.1770-1771とは異なるようですね。(1770-1にbaptool同様の規格が含まれているかは未確認)
あまりにマニアックだったのではじめは紹介していなかったんですが、業界でもご存知の方は少ないようなので、せっかくなので。
放送用マスターリミッターの設定や、番組全体、番組間の音声レベル傾向の分析に便利だと思います。 (非力なPCだと固まります。C2D以上推奨)


なお、ミキサーやレコーダーなどハードウェアに搭載されているピークメーターでは、放送・業務用でもメーカーや機種によって1/100sec連続、1サンプルでもピーク到達で点灯、ピーク到達サンプルが(n)回連続で点灯、-3dBFS、-1dBFS超えで点灯など様々な仕様のものがありますので注意してください。
私も以前はピークが点灯しやすい機種とそうでもない機種とか、現場で違和感を感じる場合がけっこうあったんですが、メーカーの方に質問してなるほど、と思いました。
(たいていはマニュアルにも書いてありませんので必要な方はメーカーに確認してください)


ITU-R BS.1771のラウドネスメーターについては機会があれば。
(個人的にはあまり必要性を感じていませんけど…)


その他のダイナミクスとしてはsonnox oxford、33609、1178、DPR-402、contour付きのdbxは何でも好きです(笑)。
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